□鬼導師の青年
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「あぁ、そうだよ。俺が藤華だ」
「…なんで姿を現した?」
俺はただ問うた。
今姿を現す意味はない筈。
「気紛れだよ。お前に会って、戦いたかった…それだけさ」
巨躯の鬼から飛び下り、地面へと降り立つ。
「雷鬼、お前は精霊の相手をしろ。倒したら食らえ」
鬼が吼える。
「鬼の相手は任せる。藤華は…俺がやる」
俺の言葉にルナは躊躇した。
今の俺では勝てないと判っているから。
『…判りました。御武運を…』
「…ありがとう」
ルナが駆ける。
武装し、手には剣。
俺を信じて駆けたパートナーを見送り、藤華を見る。
奴の手には黒い鎌。
「…'召喚-牙月'」
俺の手に刀が現われる。
鞘から抜き去り、その刀身が月光に煌めく。
「藤華。俺にはお前と闘う理由がない」
「お前になくても俺には有る」
「…わかったよ」
出来れば戦いたくはなかった。
藤華は俺なんだ…兄弟同士で…家族で戦い合うなんて哀し過ぎる…
「ぼ〜っとしてて良いのか?それとも余裕故の油断か?」
背後から聞こえ、ハッと我に返る。
「鎌砕(かまくだき)」
鎌が横に振られ、俺の首を削ぎ落とさんとする。
しゃがみ、躱して距離を取る。
距離を取った直ぐ後、かがみ込む。
「颯燕-獅子駆羅」
刀を携え突っ込む。
「死旋-鷹削」
鎌を頭上で回して突っ込む俺に振り下ろす。
(ちっ-間に合わない…)
寸前でブレーキをかけてバックステップ。
「'吹け-一陣の旋風-アルフセルフォ'」
手を振り抜き、猛烈な旋風を巻き起こし藤華に向けて放った。
「温いな。晟纏翔愚(せいてんかいぐ)」
旋風が藤華を目前にしてかき消された。
「障壁!?」
バックステップで滑りながら牙月を地面に引き摺り、魔力を込めて解き放つ。
「月影迅」
銀色の波動刃が藤華に向かう。
更に、振り上げた牙月を下に振り切る。
「大-月影迅」
普通の月影迅とは比べ物にならない大きさで魔力を放つ。
「解魔天」
魔力による相殺でかき消された。
(障壁に魔力相殺…技が防がれたって事は…藤華はやっぱ俺より強い…)
現実を知った今、やはり戦いは不利。
「お前の力…弱い」
「ちっ…」
刀と鎌が交わった時、言われた。
「終りだ」
鎌を持っていない手に黒い三つの刃…爪のような剣が装備される。
「うっ…く…」
逃げようと身体を逸して鎌を弾く。