□十二創支の暗躍
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「奥義」
両手で槍を持ち腰を落す。
「Dig-Zexyd-Lance」
地を蹴り駆け出す。
槍の先は既に寒椿の胸を捉えている。
魔力の籠った槍を思い切り突出す。
それは地を抉り蒼天を穿つ一撃。
一撃必殺には及ばないモノのそれに近い威力を持っている。
故に、一撃必殺となんら変わりはない。
「マジかよ…っ!!??」
寒椿の驚いた声が聞こえた瞬間、グングニルがメイによって止められていた。
突出したグングニルは横からメイに掴まれ寒椿の水月手前でぴたりと止った。
「や、やるなぁ…参った。本気出してないとはいえこんな速攻かけられるなんて…完敗だ」
寒椿が両手を上げた瞬間、中空から降りた低い声。
「凄いじゃないか、この成長…驚愕に値する」
それはいつかの戦闘で出会った神夜だった。
「あんたか、久し振り」
俺は片手を上げて地に降り立った神夜を迎えた。
背中に燃えていた炎の翼が消える。
「凄いな、あんたの能力?」
「あぁ、気にするな。自分の能力はある程度は秘密にしておきなさい」
言われるまでもない。
これは俺の第二の奥の手だ。
安易に使うつもりもない。
「それで?なんか用か?」
「その理由はすぐに現れるさ」
そう神夜が言った瞬間に世界が一変した。
見渡す限り赤朱紅。
熱い炎の様な風が吹く世界に俺達は立っていた。
「現離界…」
それは異空間と化した現実の世界。
実在する“現世の処刑場”
『どういう事よ』
メイは既に臨戦体勢となっている。
拳には魔力が宿り徨光と輝きが宿っていた。
「深淵の無限武装」
神夜が呟いた通り名…それは俺には判らないモノだった。
『…十二創支!!』
そうして俺達の前に唐突に現れた禍々しいその姿。
「ゼアムの指示で参上した。名をイガーテと言う」
名乗った男は既に中空に武器を展開していた。
「…マジ?」
恵の話によれば、十二創支って目茶苦茶強いんだよな?
『いくわよ、基之!!』
メイはヤル気満々。
「怪我がようやく治ったばかりなのだがな…」
と言いつつも焔を撒き散らしてヤル気満々な様子の神夜。
「暑い…俺はパス。三人いれば充分だろ?回復は椿にさせるから頑張れ…」
と暑さにやられ椿を庇う様に立つ寒椿。
「…焔かぁ。同じ属性のと殺り合うって初めてかも」
と朱雀も構える。