中編
□四季、始期、死期
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四季、始期、死期
それはよく晴れた日の現世の空の下。
「ねぇ、あなた死神?」
その声は、昼の閑散とした静けさの中に突然降り注いだ。
まだ微妙に幼さを残す高い声に、弾かれたように日番谷は後ろを振り向いた。
その視線の先にいたのは一人の年端も行かない少女。
淡い琥珀色の瞳が、真っ直ぐに日番谷を見つめていた。
驚いて周りを見回してみるが、ここには自分と目の前の少女の他は誰もいない。
右へ左へと彷徨わせた視線を戻すと、それを受けて少女は無邪気な笑みを浮かべた。
別に自分の姿が見えていることに問題はない、義骸に入っていれば普通の人間の目に映るのは当然のことだ。
問題があるとすれば、それは少女の言った言葉の方。
彼女は彼に、『死神か』と問い掛けた。虚を退治しているところでも見られていたのだろうか。しかし目の前の少女からはたいした霊圧は感じられない。ならば何故、初対面の自分にいきなりそんなことを言ってのけたのか。
少々、頭が悪い。
別にそんな結論でもこじつけて、さっさと立ち去ればよかったのかもしれない。
しかし、不意をつかれ、咄嗟に言葉を弾き出した口は既に「…なんでだ?」と聞き返していた。
「…勘!」
「は?」
「勘だよ、カン。何となくそう思ったの」
困惑して思わず首を傾げた日番谷に、もう一度自信満々に不明瞭な事を言って少女はニッと笑った。
つまり、…からかわれたのか。
無言のまま眉を顰め背を向けた彼を、鈴を転がしたような声が追い掛ける。
「女のカンって当たるんだよ」
「知るか。お前みたいな…」
「え、何?」
「…何でもない」
お前みたいなやつをまだ女とは呼ばない。
そう口まで出掛かったがこれ以上関わるのはごめんだとばかりに、彼は少女に手を振って見せた。