テニス

□階段、落下症候群
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始まりは突然。


階段の一番上からキミが降って来たんだ


目一杯の 白と共に












階段、落下症候群












辺りに散乱するノート。


転げ落ちたオレの腹の上には落ちて来た女の子。



これってラッキー。…なのかな?





「え、と…大丈夫?」



とりあえず、落ちた時のまま固まっている彼女に声をかけてみるが、反応は無い。




まさか…気絶してるとか言っちゃう?






「ふぇ…。」



弱々しく漏れた声。






「ごめんなさいぃ……。」


顔を上げるなり、罪悪感、はたまた羞恥心からか、その女の子はボロボロと大粒の涙を零して泣き出した。























「落ち着いた?」


やっと涙が引いてきたみたいだから声をかけてみた。

すると、その子は俯いたままコクコクと頭を上下に振って頷く。



「またやっちゃったね。」


ため息混じりにそう言えば、

はた、と彼女が涙を拭っていた手を止めてまわりを見回した。


クスクス笑うオレに、まだ少し涙ぐんだままの顔が赤く染まる。





「ご…ごめん。」

慌ててノートを拾い集める姿もかわいいなぁ。なーんて。







実は、彼女がオレの上に落ちて来るのはこれで二回目。


最初は大量のプリントと一緒に落ちてきたもんだから、拾うのにずいぶん苦労したっけ。

一面の白の中にオレとキミの二人だけ。
ちょっと幻想的じゃない?
なんて、くだらない事も考えてたな。





「キミってよく落ちるんだね〜。オレというクッションがあったからよかったけど、気をつけないと危ないよ?」





その言葉に、彼女が首を横に振った。




「ち、違うの。何か…あなた見た時だけ…足が…。」



ほんのり赤く染まっていた顔が、さらに真っ赤になっていく。






……………。











それってさ、オレだから落ちてくるってコト?
















「あ、あの…?」


ノートを拾い終えた彼女の手を引いて、ゆっくり立ち上がらせる。



そのまま、引き寄せた指先に軽くキスを落として、


「!?」




「次は絶対 受け止めてみせるよ。」






そう言ってニッと笑えば、彼女も少し戸惑うようなそぶりの末に、はにかんだ笑みを浮かべた。
























「ひゃ!?」


「っと。…ぎりぎりセーフ!」



次の日、彼女はやっぱりオレを見たとたん足を滑らしたんだけど





「ね。ちゃんと受け止められたでしょ。」



コクリ、と彼女はまた真っ赤になりながら頷く。



「…ありがとう。」



俯きながら呟いた言葉に、胸の中で小さく何かが疼いた。











運命だ!って言ったらキミは笑ったけど、

今も隣にキミがいるってことはさ、やっぱりあれは運命だったんじゃないかな?

って思うんだ。俺はね。











End

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