テニス

□ノンシュガー
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カリカリと乾いた音が紙の上を滑ってゆく。

西日が教室を柔らかいオレンジに照らし、机の足からは長い影が延びている



刻々と近付くタイムリミット。一定の間隔で時を刻む時計の針に、気持ちは焦るばかりだ。


「まだ終わんねーのかよ」


さっきから幾度この言葉を聞いただろう。


「俺、早く部活行きたいんだけど」

「あーもうっ!あんた字汚いのよ!」


一つ前の席に腰掛けた切原から繰り出される嫌味に、何度にぎりしめた消しゴムをぶつけてやろうと思ったことか。


「お前さ、それがノート借りといて言う台詞?」

「さっきから読めない字ばっかなんだもん。もーいやっ!期限つきの課題なんて大っ嫌い!」


足をばたつかせながら、机に突っ伏せば、頭上からはささやかな苦笑が降ってきた。


「暴れる暇があったら、さっさと写しちまえよ」


せっつくように、シャーペンでこつこつ頭をつつかれる。

なんか、悔しい…。


「…万年宿題忘れのくせに」

「その宿題忘れにノート写させてもらってんのは、どこのどいつだっけ?」

「……あたしです…」


こいつってば、ほんと国語だけはできるんだから…。

まだまだたくさんの文字が入る予定の空白を見詰めてうなだれる。

あたしは国語なんて嫌いだ…。



渋々、ペンを握り直して紙に向き合った。
プリントにひたすら綴るひらがなや漢字は、徐々にその形を崩しだし、今や暗号のようになりつつある。

やばい。段々こいつみたいな字になってきてる…。


「!」

突然、何を思ったのか切原があたしの頭を掴んで自分の方へ向けた。


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