SEED&DESTINY
□思い出がいっぱい
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子供達が大切そうに差し出した品を見てアスランはハッとした。
留め具が外れた写真立て。
蓋が開かないロケットペンダント。
動かない時計。
どれも子供の持ち物とは思えぬ程の年代物。
「…直せる?」
工具箱を持ったまま、じっと彼らの差し出す品<思い出>を見つめるアスランに心配になったのか、1人の子がおずおずと尋ねた。
「あ…、ああ。大丈夫だ。貸してもらってもいいか?」
その声にハッとすると、アスランは手際良くそれらの品々を修理し始めた。
「ただ今帰りました」
「遅くなってごめん」
ようやく戻って来たラクスとキラの手にはそれぞれ小さめのダンボール。
「遅いぞ、キラ!」
子供とゲームに興じるカガリは、そう言いながらも楽しそうだ。
「うん、ごめん。ちょっと探し物をしてたんだ」
カガリはゲームを続けながら、それでも興味を持ったらしく尋ねた。
「探し物?」
「うん、後で見せてあげるよ。きっと気に入るよ」
先の大戦で心に傷を負っていたキラが久々に本当に嬉しそうなので、カガリの心も自然と弾む。
オーブを復興させるための連日の会議。
父に反抗して飛び出したことが間違いだったとは今でも思ってない。
そうしなければ、今の自分はいないし、キラやアスラン、ラクスにこうやって出会うことは無かっただろう。
ただ、もう少し側で政治というものを学んでいれば良かったと思う。
今の自分は余りに非力だった。
ともすれば、自分の、父の掲げた理念への道の険しさに挫けそうになる。
でも、今。
キラの顔を見て心からホッと出来た。
まだ頑張れる。
-双子だから、かな?-
何だかくすぐったい気分だ。
一方、ラクスはキョロキョロと周りを見回している。多分アスランを探しているのだろう。恋愛の類にそれ程興味の無い自分から見ても、この2人のやりとりは微笑ましい。
「アスランは?」
案の定、おっとりと尋ねたラクスにカガリは答えた。
「…ああ。居間で何か修理してたぞ」
頷くとキラとラクスは箱を抱え直して居間の方へ向かう。
「アスラン」
見れば、アスランは丁度修理を終えたところだった。
「遅かったな」
工具を片付けながらアスランが答える。
「ありがとう」
それぞれ大切な物を受け取った子供達はお礼を言い、他の子供達の方へと駆けて行った。
その後ろ姿を見送って、キラが言った。
「また修理頼まれたの?」
「まあな。…それよりどこに行ってたんだ?」
そう尋ねるアスランにキラがダンボールの箱を持ち上げてみせる。
「何だ、それ?」
怪訝そうなアスランにラクスが答える。
「私が頼んで持ってきていただいたのです」
「みんなで見ようか」