sleep.03

□チェリーブラッサム
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初めからそう遠い存在ではなかったように思う。
と言うのも、彼女は不良という肩書きにもいつ染めたか思い出せない金髪にも怯まずに、むしろ勇猛果敢に。
いや元からそういった素質なのかもしれないが、こんな自分にも笑顔を見せるのだ。
しかしそれ以上に嬉しかったのはあの二人を誰と比べても対等に見ていた事なのかもしれない。
だから、俺は彼女が好きだ。そう確信している。

「…なぁ」

「んー?」

間延びした返答を発するのは無邪気な横顔。
読んでいた雑誌(恐らく戸叶に借りたジャンプ)を隣の机に置いて柔らかい笑みでこちらを向く。
ドクンと強く脈打つ音と途端に左胸に迫る激痛の波。
平常心を保ってみせるがそれは外見だけの話であって実際には息が上がるし身体は熱いし目が離せないし。
やはり恋なんて自分には似合うものではないような気がするのだ。

「お前、俺等といて楽しいか」

「そりゃあもう」

感謝してますと頭を下げられたが逆だ、下げるべきなのは絶対的に俺等の方であってだなぁ。
言いかけると制止されるように微笑まれた。
この優しさが、今まで誰も与えてくれはしなかったこの優しさが少し怖い。
きっと一度でも甘えてしまったら歯止めが利かなくなって彼女を手放す事など出来やしないのだろう。

「何でそんな事聞くの」

「いや、何となく」

「そっか」

「おぅ…」

一緒にいられる時間すらあと僅かと知っているからもどかしいのだ。





チェリーブラッサム


(080311)
卒業式の数日前。


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