sleep.03

□哀願チルドレン
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足りないものは何も身長ばかりではない。
優しさとか素直さとか重要なもの全てが足りない。
紳士であるのだって差ほど重要性がないのも身を持って知っている。
しかし見上げるわけでも見下ろすわけでもない彼女との視線はいつでも俺自身を自暴自棄に陥らせた。
いっその事キッドさんに愛して貰えば良いとまで言った事もある。
後に襲うのが更に強い自棄であると知りながら。
最悪だ。
頭を抱え込んで床を睨んでみても許せる気は起きない。
時々あるのだ。こうして自分を自分で責める事が。

「変態なんじゃないの」

けらけらと彼女はこちらの気持ちなど一切も理解しようともせず笑う。
生憎マゾヒズムが芽生えた覚えはないので反論を返すが笑い飛ばされて終わり。
こいつにはもう何も言うまい。

「陸はマニュアルに忠実であろうとするから駄目なんだよ」

「駄目とか言うな」

睨み付けてみるも視線が合っていないので無意味。
だんだんと冷静になる頭でまるで子供のような自身の行動に愚かさを感じ目眩がした。
もっと自分は大人だと思っていたのだが、と繰り返すはやはり変わらずに自暴自棄。ループアンドループ。
熱くなる目頭に俯くとまた、彼女の笑い声が聞こえた。
あぁ耳も塞いでしまいたい。

「もっと、俺が大人だったら良かったのにな…」

「でも私は今の陸が誰よりも好き」

ねぇ、変わらないで、そのままでいて。
それは何処か悲痛なまでの哀願に見えた。
しかしそれでも彼女の前では大人でありたいと思うこちらの想いが消える事はない。

要するに、願う事において彼女と自身の間にそう違いはないのである。





哀願チルドレン


(080311)
ただ、大人になりたいと切願するだけ。


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