sleep.07
□過不足ワードに溶けてゆく
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何処にいたって必ず見つけ出して自分のものにしたいという野心は顕著に表れていた。隠す気もなければ人目もはばからない。
よって毎度のことながら巻き込まれてゆくのは私ばかりだ。
たまには周りで色めきだっている子達にだって同じような接し方をしてあげれば良いのに。何故に私なのだろう。悲鳴にも似た黄色い声を発する彼女たちの方が、少なくとも私よりは喜んで受け入れてくれることには違いないのに。
「大事なのは俺が誰を好きか、ってことじゃないのか」
「ううん。私が誰を好きか、ってことだと思うよ」
そんなの今更だ、と言わんばかりに肩に腕を回して来る彼は私の気持ちを何一つ察してはいない。
顔色を変えずに巻き付く手を叩き落とす。照れなくても良いのに、なんて、あぁ本当に察していない。
「大和の…、」
「猛、の」
「……猛のことが好きだなんて、私は一言も言った覚えはないんだけど」
「いーや言ったよ」
「いつの話」
「ん?たった今」
「……」
「俺、すっごく幸せ」
キラキラと周りに星やら何やらが飛び交いそうな笑顔は反則だ。無駄に爽やかなことを自身で自覚している辺りなんかも更に。反則だ。
「こっちにおいで、愛してやるよ」
「やっ…ちょっ!」
耳元で囁かれた低い声がやけに卑らしいと思ってしまった私は完全に雰囲気に呑まれてしまっているようで。いかん、いかん!
腕を伸ばして近付いて来た彼に、前例の二の舞はごめんだと顔を剃らす。
「キ…キスは、嫌だ」
「どうして」
だって私はアンタのことなんか幼なじみ以上には見れていないし、そりゃあ恋愛対象として見ていた時期がないと言ったら嘘になるけれど、変わり者のアンタの事だからどうせ暇つぶし程度にしか思っていないに違いないのでしょう?
本気にさせられそうになった時期があった分その怖さが解るのだ。
まさかここまで心に入り込むことを許してしまうとは、自分でさえも思ってもいなかったのだ。
否定ばかりを繰り返してみても結局のところ私は彼を嫌いになんてなれる訳もなくて、つまりそれは彼が散々吐いていた甘ったるい言葉と意味を同じくしている訳で。
「それはつまり、やっぱり俺が好きなんじゃないか」
「でも猛は怖いから嫌いだ」
「嘘吐くな、好きなんだろ?」
「何を馬鹿な」
「俺は…本気で好きなんだけど」
「っ!」
「だから、ちゃんとお前の口から聞きたいの」
「…、っ」
「な?言ってくれよ」
「……す…っ」
愛してるなんて言葉じゃあ、とてもじゃないけど足りなくて(もどかしいったらありゃしない!)
(090523)
好きだよ、ばーか。
リクエストありがとうございました。ちなみに初の大和ゆめです。