sleep.07

□爪先立ちのバレリーナ
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肌寒い、どころではない冬の夜道。
部活帰りに必ず家まで送り届けられるのはもはや習慣になっている。
帰路方向が異なるはずなのに律義にもその役を買って出てくれた彼もまた同じく習慣、と思っているのだろう。
というか、そうであれば良いと思う。身勝手な願望。


「寒いねー」

「寒いな」

「冬だねー」

「冬だな」

「おでん食べたくなるねー」

「…そうか?」

まさかの意見の食い違いに、むっとして睨みをきかせると知らない振りを返された。
性格的にも外見的にも武士そのもの。堅物なので困る。

「単刀直入に言いますが」

「何をだ」

「おでん、奢って欲しい」

「ふざけんな、お前人の二倍は食うだろ」

金がもたない。勿体無い。
二言で却下されたのが悔しくてズルイと膨れてみせた。が、またもやお得意の気付かない振りだ。
ズルイ、ズルすぎる。

「じき棟梁のくせに金がないのか、若頭」

「それとこれとは関係ねぇ」

ぐだぐだと他愛のないやり取りを続けていると、はくしゅん、突然大きなくしゃみを発した彼。
よく見ればこの寒空の下にも関わらずマフラーをしていない。おまけに練習で身体が温まっていたのか腕捲りをしているし。
見ているこちらが寒いではないか。ぶるりと身体が冷えきった風に震えた。

「ねぇ、マフラー貸してあげるよ」

「いらねぇ」

「いやいや見てるこっちが寒いから」

「気にするな」

「でも、風邪引いたら困るでしょ」

「誰がだ」

「私が、かな」

「…」

「あと、みんなが」

「……馬鹿ヤロー」


(090526)
首にマフラーを巻く振りをしてキス!


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