sleep.07
□迫り来る終焉へタッチアンドゴー
1ページ/1ページ
(筧/IC21)
言葉にするのと態度に表すのではどちらが得意か。
口に出して問うてみれば寝転んでいた彼が半身を起こしてこちらを見た。
頭上には疑問符。
「これはまた…随分と唐突な質問だな」
ククッと口元で笑ってみせるだけの彼は大人だ。
子供な私は好奇心の塊と化して輝かせた眼を対称である彼へと向ける。
「いや、水町だったら態度だけど筧くんはどうなのかなぁ、って」
二人は似ているようで似ていなかったり、正反対のようで類似点が多かったりするので不思議だ。
冷静な振りをした情熱家か、情熱家の振りをした天然の策士か。違いは大きい。
「まぁ確かに口に出すのは少し気が引けるが、うーん…」
「そういえば好きも愛してるもあんまり言ってくれないもんね」
「ばぁか!」
試しに言ってみれば何がおかしいのか、隣で聞き耳を立てていた金髪がははっと笑い声を立てた。
瞬間に和む空気は彼の力に他ならない。
「何かさぁ」
「ん?」
「筧くんって意外と面倒くさい人だよねー」
「ねーっ」
だったらさぁ、俺にしとく?と冗談を吐く男に渋い顔を向けた彼に焦りを見てついつい楽しくなってしまう。
この時間も果たしていつまで続くものか、と思えばそこに見えるのはいつか来る終わりであったので少しだけ悲しくなった。
「そういえば!」
「「あ?」」
「昨日ケーキバイキングの無料券もらったの」
「おー!」
「へぇ、」
そりゃあ良かったなぁ、と向けられたのは紛れもなく大人の笑み。色気があるからドキドキしてしまう。
同い年なのにどうしてこうも差が開くものかと回転椅子に跨がりくるくると回りながら万歳をする男に溜め息が漏れる。まったくガキだ。
しかしながらどうにも遠心力で流れる金色はきれいだ。と思う。
きらきら、きらきら。
世界も彼らも、時間も今はまだ。きらきら。
「安心とか、」
「ん?」
「いや何でも」
馬鹿馬鹿しいとも思ったが不快感はどうにも感じられないので別に良いや、と吹っ切った。
諦めではない。単に認めたというだけだ。
「無料券」
「え?」
「三人分あるんだ」
「……、じゃあ!」
「ふふっ」
三枚の紙切れをチラつかせて急かせば喜びと微笑ましさが笑顔として返った。
それはまさしく、史上最高幸福論
(090602)
終わりがあるから輝く世界の住民としての生き方論。