実に愉快だと言う割には目が笑っているように見えない。つまり発言は嫌味である。思い当たる節は無いはずだが明らかに矛先は自分に向かっているのだ。
「良いよねーキュウゾウは多少の我が儘も多目に見て貰えちゃうんだから羨ましー」
「…そんな事はない」
「なに遠慮とか、あぁそういう謙虚な性格だから私より給料も多いのかー」
「落ち着け」
「うるさい!」
いくら言っても止まる様子がないので、まさに機関銃のように愚痴を撒く口を片手で塞いだ。
「キスは?」
「…は、」
「こういう時はキスで黙らせるもんでしょ普通」
「…(普通か?)」
やり直しだと目を閉じられては逃げる事など出来はしない。取り敢えず肩に手を置いてはみたが何かが違う気がするのだ、何かが。しかしながら俺が色恋沙汰に疎いのは自他共に認める事であり、こういう時はやはりシチロージやらヘイハチやらが適役に思えてならない。
「キュウゾウ」
「何だ」
「ヘタレ?」
「…」
今度ばかりは黙らせてやると噛み付くように唇を奪った。
(071112)
伸ばされた手は肩ではなく顎に。