口数少ない彼は大人で、私は何も知らない無知な子供であっただけだ。
寂しいと言えば彼はしっかりと抱き締めてくれていたし。それでもまだ足りないと何かに焦っていた私は、今となっては一体何に焦っていたのかも解らないというのに。
「、かけい」
「大丈夫だ」
「かけ、い…!」
「ちゃんと愛してるよ」
掴んだジャージは皺になってしまった。気にするなと笑ってはいたものの、何だかそれすら嘘みたいだなぁとまた涙が出そうになった。
(水町くんはまだ水泳が好きなんだよ)
(そうだな)
(アメフトより、も)
(同じくらいじゃねぇのかなぁ、今はさ)
(…)
(…)
「やっぱり水町くんはさ、筧」
「なぁ」
あいつはお前の事好きだよ、絶対
(そうかな…)
(そうだって)
(愛してるって?)
(そう言ってた)
(071120)
大丈夫とか。愛してるとか。水町の気持ちを筧くんに代理させただけです。筧くんだいぶ嘘吐いてますけど。