sleep.01

□本質はそこに
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ただ唇を合わせているだけ。そう言ってしまえば簡単なのだがしかし、こんなにも心臓が痛いのは何故かと問えば、何が面白いのか目の前の男は笑うのだ。
髪を掻き撫でる手は大きくて全てを護れそうに見えたし、二本の太い腕からは何も零れ落ちる事はないのだろう。一方この私の細い腕では何が護れるというのか。零れ落ちてしまった覚えしかないのに。

「これで私の心臓が破裂したら武蔵の所為なんだから…」

「いや破裂はしねぇから安心しろ」

ククッと喉元で笑うのならいっそ声を出して笑えば良い。拗ねてみせると唇が尖っていると指摘をされて啄まれた。無論、彼の唇でだ。

「む、武蔵ってさ」

「ん?」

「一見硬派だけどセクハラ親父だよね」

「そのギャップが良いんだろう」

それでもやはり詐欺のようなので悔しくなり、また唇を合わせた。丸く見開かれた目がどうにも愛しい。

「キス、」

「ん?」

「する方が好きでしょ」

「……まぁな」

される方を好む俺が良かったかと問われた。
そ、想像がし難いではないか…!



(071212)
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