sleep.03

□死ぬのじゃないかと不安になった
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擦り寄った胸からは定期的な鼓動が響く。
寝息は深いし睫はやはり黄色く、そして長い。
腰に回される腕は細くとも自分のそれよりは頼れる気がした。
それもそのはず、彼は戦う為に生きているのだ。


(あぁ、そうだった)


当たり前な事をうっかりと忘れてしまいそうになるほどの平和は正直合わないのだ。彼にも、私にも。










トクン、トクン、
耳の奥で彼の生というものを感じた。
生きたいとはつまり何の事なのだろう。
ヒョーゴをああしてまで貫くに値するのだろうか。
いくら考えた所で解るはずもない。

ぎゅっと更に頭を押し付けて彼が生きている事実をこの耳に焼き付けた。
彼も近々私を置いて逝ってしまう。
彼の斬った同僚と同じくして。
だからこそ忘れるものか、私だけは。
引き寄せた腕に私ではない力が加わる。
それだけでこんなにも泣きたくなるのだから私も彼もこの世界ももうどうにでもなってしまえば良いとさえ。




















「だから、この事は他言しないで欲しいんですけど…」

「えぇ、アタシもそのつもりで」

「カ、カンベエ様にも駄目ですよ!」

「何と。このシチさんがそれほど野暮に見えるとでも」

「いえ、ですが特に、本人には…!」

「だから言わないと言っているだろうに」





死ぬのじゃないかと不安になった

I got nervous that he might die.
(言えば良かった。)



(080311)
気付いた時にはいないなんて皮肉な。


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