sleep.03

□狼に惚れた赤頭巾
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此処にいるのは三人だけだと笑った後に息を切らして走って来る栗田くんを見て四人だったかと薄く笑う。
一年生(+雪光くん、まもりちゃん)には内密に特訓を始めようと言い出したのも恐らく彼だ。
日に反射して光るピアスに彼の背負う青春を重ねて目を細めたのはどうやら私だけではないらしい。
隣に立つ武蔵も同様に、悪魔のように鋭い耳や嬉しそうな顔を見ては眩しい表情を見せていたのだ。



どうして貴方の口は裂けているの?
(不安と恐怖心を喰い殺す為だ。)

どうして貴方の耳は鋭いの?
(情報と仲間の声を何一つ聞き逃さない為だ。)

どうして貴方の目は真っ直ぐなの?
(ボールを糞サルまで通す弾道しか見えちゃいねぇからだ。)

どうして貴方はわざと悪く見せているの?
(こっちの方が何かと都合が良いからだ。)


ふと思い出したのは昔交わした童話の一節を真似た会話。
聞く度にアメフトへの一途な情熱(これを愛情と称せばきっと彼は照れて怒る)が強くなって彼を引きずり込んでいく感覚が印象的だったのをよく覚えている。
望むのならこのまま堕ちてしまえば良いとも思った。

「しっかし相変わらず高いプライドだなぁ」

「そこが売りであり欠点でもあり、それでいて…」

「案外、単純で?」

「そうそう単純かつ純真で」

きれいな表現が似合わないのだってわざと逃げているからであって、真髄はいつだって底面に沈んでいる。
それだって彼が望むならば、私は…。

「放任主義も大概にしておけよ」

「解ってる」

「溺愛もな」

「は、い」

苦笑えば同じものを返された。
あぁ、今だってこんなにも強く光るピアスが眩しい。





狼に惚れた赤頭巾


(080311)


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