どうにもならないと希望を捨てた訳ではないが、しかしこれは。
積み重なる紙には訂正を示す赤い文字が多く、持病の胃痛を引き起こす原因となる。
そうして再びきりきりと痛みだした鳩尾辺りを片手で押さえては前屈姿勢で越えるべく激痛の山を越える。
いつもの事だ。
「お疲れ様です」
「えぇ、毎回困ったものですよ」
苦しい笑顔を向けて社交辞令、それは彼女だって解ってはいる事だ。
ただ手に負えなさ過ぎて何が何だか。
ちらりと見た紙の山は依然として赤いままであるし、まだ色の着いていない残りにもこんなに多くの空白が。
どうせまた増えるのは赤い文字なのだろう。
「最近考えるんです。私は一体今まで何を教えて来たのかと」
「それはそれは」
「それにね、怖いんですよ…何も知らないまま子供たちが此処を出て行ってしまう事が」
「…」
「みすみす無駄に死なせたくはないのです」
(080310)