sleep.03

□自虐に生きる彼女は
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究極を言えばそれは間違い無く愛なのであろうが、如何せん、取り敢えずはそれを知らない自分を責めなければならないらしい。
せめて優しい言葉の一つでも欲しいのだと泣き崩れる女は縋る事にも酷く配慮をしているようで心もとない。だからと言ってこの口が慰めを囁けるわけもなく。やはりどう足掻いても無力なのだなぁなどと分析を始めた脳の優秀さを呪った。

「妖一は狡くて酷くて難しいくせに優しいから嫌い」

「それが何だ。テメェと何の関係がある」

「そうやって試すみたいな口調も、」

嫌い。苦しそうにも清んでいるようにも見えるほどはっきりと歪んでいく、表情が歪んでいく。
それさえも自分の所有物にしてしまえたら。
浮かんだ欲は利己的であったので笑う事もまだ可能だ。

「どうせなら身体目当てであれば良かったのに」

「馬鹿か」

それは非道だと言いかけて止まる。非道、その単語から瞬時に連想されたのが自分であったのだ。此処に鏡でもあればより理解を深める事も出来ただろうに惜しい事を。

「テメェは黙って後ろから付いて来りゃ良い」

「後ろは嫌」

じゃあ前か。
精一杯に不機嫌な顔をしてみせるとうっすらと目が潤み始めたではないか。この性分だ、むしろこの後に続く俺の一言によってはスイッチまで入りかねない。
しかし面倒ではないと理解して欲しかった。それだけは。女々しい欲だ。

「だったら何だ、隣に並びたいのか」

「…」

意固地になって首を振る女をどうしろと。元からそのようなもの相手の扱いは得意ではないと言うのに。

「だって、蛭魔の隣は姉崎さんだからさ」

「、は」

「無理矢理に割り込もうなんて普通なら思わないじゃない」

「……馬鹿か」

立場としては恋人のはずなのだがどうにも自信というものが見えない。性分だとばかり思っていたのだがそれも思い違いでしかない。
自由を奪っていたのはこちらの方だとは思いもよらず。むしろ俺は自由気ままであるとばかり。

「本当に、馬鹿だな」





(080524)
自嘲。


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