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□ともだちになろうか
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一日の晴れを置いて天候はまた雨に戻った模様。天気予報のお姉さんが朝からしゃきしゃきと言っていた。
部屋の中の洗濯物が湿気を増やして肌がじっとりと気持ちが悪い。
赤い折り畳み傘は押し入れの奥へ封印することにした。彼の要望に添えて。
だけど登校するのに傘がないのはやはり不便で仕方がないのでビニール傘を持たざるを得ない。
ごめん、じゅう君。髪が濡れるのは本当に嫌なんだ。
「行ってきまーす」
「はいはい勉強に勤しみたまえよ、学生諸君」
ケラケラと笑う母。どうせ一通りの家事が終われば昼寝の時間なのだろう。今日は生憎の雨だから買い物にも出ないはずだし!
むっとした表情のままドアを開ける。室内のとは比べ物にならない湿気が肌を滑っていく。あぁ気持ち悪い!
「不快だー…っ」
おかげで悪態吐くも元気が出ないので更に気分が重い。ずっしり。象の一頭くらい背負っているんじゃないかってくらいの重さ。
これから半日過ごさなければならない学校生活を想像しては深い溜め息が漏れるばかり。
いつからいたのか背後から押し殺すような、喉で笑う声がした。
振り向くと意外や意外。
「黒木…くん?」
「そ、黒木くんだよ」
しまった名前があやふやだった。(黒崎だったか黒田か…彼についてはその程度のレベルしか知らない。)
しかし愛想の良い子供のような笑顔は自然と人間の警戒心を緩ませるものだ。一緒に学校まで行こー、と首をこくりと横に傾げられた時は正直可愛いと。思ってしまった。
「俺、十文字の友達なんだけどさ」
「あーいつも一緒にいるよねー」
「もう一人トガって奴もいるんだけど知ってる?」
「メガネの?」
「そうそう」
元からお喋りな気質なのか教室に着くまでにたっぷり三人の馴れ初め(?)を聞かされるはめになった。代わりに私とじゅう君の話をしろとせがまれたが。(恐らくアメフト部員には昨日の蛭魔さんの件もあってバレているようだ。)
でも本当に仲が良いってことは解ったよ、クロちゃん。
フレンドリーになり過ぎて、いつの間にかそんなあだ名で呼んでいたことには我ながら驚きだ。
「で、俺等がアメフト部に入ることになったきっかけはね!」
しかし待った待った、何てことだ。授業中も続くのか!
どうやら席も前後の位置だったようで。どうして私は名前を覚えていなかったのか悔やまれる。何故だ。
「氷を持って走るんだけどさー」
「へぇー…」
雨のだるさはなくなったが、これはまた。
(080729)
ちょっ、じゅう君、クロちゃんにガン飛ばすの止めて。誤解だから誤解。