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□餌付けとかそういうんじゃなくて、
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今朝の雨雲は跡形もなく。屋上から見える空は夏場のそれのように青かった。
爽やかな風、共に澄んでいる。
「黒木と、仲良かったのか」
昼休みに呼び出されてそう言われたのはたぶん今日の授業中が原因だ。と、思う。正しくは登校中から、と言うべきかもしれないが。
てっきり一緒にお昼を食べましょう的なアレかと思ってご機嫌でお弁当片手にじゅう君の背中を追って来れば、何てことはない。この様だ。
笑いを通り越して泣きたくなるほどに滑稽な自分。ってあれ?何で私浮かれてるんだろう。
「私は、もしかしたら、お弁当を一緒にとか…そういうシチュエーションを、」
「まぁそれは一緒に食べるけどな」
確認だ、確認。
念のためだと付け加えてコンビニの袋を漁り始めた横顔は些か焦っているようにも見える。もっとも授業中の疲労からくる錯覚かもしれないが。(四時間立て続けに私語というのも決して楽ではなかった。)
頑張ってくれてありがたいけどさ、ラブじゃなくてライクなんだよねー。
しかし駄目だ。言えない。それだけは、まだ。
でも少しだがそんな一生懸命なじゅう君を、確実に好きになりかけていっている。そんな気もするからわざわざ訂正なんかしなくても良いとも今は思う。
少なくともクラスで。いや学年というか学校中では一番話しやすい男の子になっているし。
「食うか」
「なにを」
「これ」
唐突に差し出されたのは新発売のティラミス。添えつけてプラスチックのスプーン。
もしかしたら私の為に買ってくれたんだろうか。
高校男子がティラミスを買う勇気も気持ちも女の私には知れないが、これは。
餌付けされているのかもしれないと思うと何だかやるせない気持ちでいっぱいだ。
受け取ったそれを口に入れながら思ったが、まぁ良いや。ティラミスが美味しいから。
「お昼、みんなで食べたりしないんだね」
「みんなって誰だよ」
「その、クロちゃ…黒木くんとかセナくんとか部活の人達と」
「…」
「とか、思っただけだから。ごめん」
今のは自爆、だったかもしれない。さすがにクロちゃんの名前は今出すべきではなかった。
迂闊にも口が滑ったなんてそんなのは言い訳でも何でもない。
「ていうか場所移って貰ったんだよ今日だけは」
「へ?移って、貰った…って?」
「そうでもしなきゃ二人で飯も食えねぇし…」
「あの、それって…つまり」
「……美味いな、ティラミス」
照れた!
(あーもういいから早く食え!)
(は、はいっ)
(080803)
つられて私も照れた。