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□こうすれば二人で使えるでしょ?
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降り始めた雨は終わりを見せるどころか激しさを増す一方だ。
近くのコンビニで傘を買おうというじゅう君の提案には賛成の意しか見当たらないので暗い中にほんのりと灯る明かりに向かって走る。足の速い彼に手を引かれるような形で。
「あ、ヤベェ…」
「どしたの」
「財布…部室に置き忘れて来た」
「なんだそんなこと」
レジに傘を出したまま頭を掻くじゅう君。
仕方がないなぁ私が出そう。鞄に手を伸ばす。
というか財布がないんじゃラーメンも食べに行けないじゃないですか十文字くん。
「ちょ…!」
「え?」
反射的に、だろうか。掴まれた手首。
首を傾げれば慌てて離された。
「なぁに」
「いや、ほら、払わせるわけにはいかねーだろ」
「んー…でも今はそんなこと言っている場合じゃないと思うんだよねぇ」
ほら、見てよ。視線を外に向けてやると同意を表す声が漏れた。おー。
凄まじい土砂降り。ていうかさっきまではもう少し穏やかじゃなかったっけ。
「ラーメンはお預けだねぇ」
「…だな」
見て解るまでにガックリと落とされた肩。雨に濡れた後も手伝って捨て犬のようなオーラを放つ。
何だ…こう、ぎゅっとしてしまいたい。
「じゅう君の家ってさ」
「ん?」
「此処から遠い感じですかねぇ」
「あー微妙に遠い感じだなー」
じゃあ私の家が先だね。
買ったばかりの傘に二人で並んで入る。狭いけどその窮屈さが心地よい。
「危ねぇぞ」
「あ、ごめん…」
車がすれすれに走る道を気にして然り気なく車道側に回るじゅう君。傘も心なしかこちらに傾いている…ような気が。(だってまた肩が濡れて…!)
「そうだ!」
「なーにが」
「傘にさ、名前書こうよ!」
「…何で」
「え?だってそうすれば兼用できるじゃん」
にっこりと笑って顔を上げれば何やら鳩が豆鉄砲を喰らったような顔を見た。
見開かれた目がぱちぱちと瞬く。揺れる睫毛が何だか可愛い。
「大事に使おうねー」
「…おー」
(090525)
照れるなら手なんか挙げなければ良いのに。