sleep.04

□似非歌ジンクス
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解らないと喚いては止まる気配がない。
まったく迷惑極まりない奴だなぁと、出来るだけキツイ視線を向けてやる。
ここは俺の家だ。

だって難しいんだもんって馬鹿そんなの俺の知ったこっちゃねぇよ。あーあー涙目で見たってそれはお前の宿題だろ?仕方ねぇだろうが。
…いや、だからプリントは見せねぇって。

「しゅんのケチ」

「言いたい放題だなお前はよ」

「何なの!私が可愛くないっていうの!?」

「はいはい可愛い可愛いねー」

「キーッ!」





カリカリと響く筆圧の音は俺の。
すーすーと聞こえ始めた寝息は言わずとも彼女の、だ。

「寝てるし」

「くかー」

「仮にも男の部屋だっつーのに」

「ぐぅー」

「ちょっと無防備すぎなんじゃねぇの?」

「ふふっ」

「…よだれ垂れてるぞ(ていうか笑ってたなコイツ)」

仕方なく口元のそれを素手で拭ってやる。
少しだけ触れた唇は意外に弾力性があってドキリと、した。

………いや、やっぱりしてない。してないよな俺。



「…しゅん」

「な、っ!」

「……頑張れー」

「は?」

寝言でしかない。
しかし夢にまで出るほどに俺という存在は彼女を侵食しているらしい事は確かだ。
嬉しい。不覚にもにやけてしまうほど嬉しいぞ、これは。

「んだよ…結局終わってねぇし」

誰も見ているわけでもないが、慌てて照れを隠そうと先ほど彼女と睨み合っていたプリントを手に取る。
やはり真っ白だった。予想通り。
せめて名前くらいは書けよとシャーペンを手にするがいつもの癖で自分の名字を書いてしまった。それだけで終われば良かったのに、彼女の名前を続けて書いた俺。
結婚したらこうなるのかなぁ、なんて考えながら。でもいつかはお互い全然違う奴と結婚するんだろうなぁ、なんて思いながら。

「……って、馬鹿か俺は!」

恥ずかしくなった。
同時に少し寂しくなった。
自滅である。





(080628)
手を伸ばした消しゴム。何故か彫られている俺の名前。
(これは、両想いになれるとか、そういう…!)


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