sleep.04
□悉皆まさしく青春
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見かけない人が来たと思ったが近付いてくる方向が確実にこちらであるので、これは参ったなぁ。
席を立とうにも図書委員の仕事を放棄するわけにもいかないし。
大体サボって姿を見せない他の当番は何処で何をしているんだ、ばかやろう!
しかし叫ぶにも心の中だ。何故なら此処は図書室だから。
「あれ?今日は1人で当番かよ」
「えぇ…はい」
なるべく無難な流し方で返したのに、何だその態度はと言われた。
馴れ馴れしいのはそっちの方だとやはり心の中で叫びながら顔を上げる。
睨む。
「……なーんだ、じゅう君か」
「何だとは何だ」
「あーいやー眼鏡掛けてるからさ。もしかして迎えに来てくれた?」
「そっ」
でも残念、まだ仕事は終わりそうにないんですよー。
目の前の時計は完全下校時刻の1時間前だし。まだ勉強中の生徒もいるし。
「じゅう君も勉強してけば?」
「ふざけんな、かったりぃよ」
「そのくせ頭は良いなんてどういう仕組みなの、君の脳みそ」
「ていうかこれは才能だからなぁ」
「そーんな馬鹿なことがありますかっての!」
指を差して笑った途端に周りからの射るような視線。スミマセン、私が悪ぅ御座いました。
隣では共犯者であるはずの少年が笑う。詳しくいえば少年なのか青年なのか解らない。つまり中間だ。中途半端なお年頃。
「こ、怖かった」
「怒られてやんの」
笑う顔は爽やか。スポーツを始めた効果なのだろうか。
だったら私は騙されたりなんかしないんだからね!
意気込んでみる。
それがもたらす利益はよく解らない。
「なぁ、終わったらゲーセン行かね?」
「行かなーい」
「じゃあアイス食わね?」
「食わなーい」
そうこうしている内に時間は過ぎている。1分1秒、確実に。
完全下校時刻まではあと40分。
「じゃあ、」
「ん?」
「俺の家行かね?」
「…」
「つーか俺の部屋、行かね?」
「…うん、行く」
それが日常。毎日変わりなく幸せなのである。
(080628)
あ、でも結局勉強はするのね。