sleep.04

□忘れかけた約束を守る彼は今にも
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荒れるような風が吹いている。
さらり。目の前で靡いては揺れるあさぎ色の髪を、ただ見つめていた。

「おい」

「ん?」

常に警戒というものを解かない彼が視線に気付いたらしく、くるりとこちらを振り向く。
片腕がない。

「いい加減うぜぇ」

「うん、そう言うだろうなぁって思ってた」

「…チッ」

いつまで此処に居るつもりなんだ。
吐き捨てるように言ったそれは私ではなく自身に問いているように聞こえる。
そうだアンタはいつまでもこんな所にいるべき存在じゃない。もっと自由に生きなくては。
しかしそれは此処にいる限り不可能なのだ。彼も私も。


「で、テメェは何しに来たんだ」

「いやぁ、ジョーがへこんでるんじゃないかと思ってね。慰めてあげようかなぁ…なんて」

「要らねぇし。つーか、その呼び方で呼ぶな」

意外にもへこんでる事には反論はなし。どうやら今回のお仕置きは相当堪えたらしい。まったく懲りればよいのに。(しかし彼には学習能力というものが足りないのだ、致し方ない。)

もう良いからどっか行け、という言葉を無視してその場に座り込めば、そのうち何も言わなくなった彼。
正面にある背中は心なしか丸いようである。ひしひしと漂う哀愁。


「ジョー…!」

「うわっ」

感極まって飛び付いた背中はぐらりと大きく揺れた。しかし倒れない辺りさすがである。

グッと頬を寄せると彼の匂いがした。同時に感じたのが昔と変わりない温かさなので涙腺が弛む。
変わってしまったのは彼だとばかり思っていたのに。実は私の方だったのだ。

「そんなに無理しなくても良いんだよ?」

「馬鹿野郎、そうでもしねぇとテメェと一緒に生きてなんざいけねぇんだよ」

付け加えて、どこの世の中も厳しいものなのだとも諭した。ゆっくりと穏やかな口調で。
破滅。こんなにも純粋な彼が苦しむならば世界がそうなってしまえば良いとさえ思った。しかしそれでは彼の望みは、彼との約束は。
叶えられないままだ。


「俺は、テメェ1人も満足に護れそうにねぇほど弱い」

「そ、んなこと…」

「今はな」

幼い頃の約束は未だに彼を縛り付たまま。
叶わない。





(080628)
悪あがき。だからといって残りの片腕で何が出来ようか。


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