sleep.04
□勝率リスク
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無駄に美人であるから嫌なのだ。
吐き捨てた彼女に、ならば不細工であったら良かったのですかと聞く。しかしそれも嫌だなぁ、とは。一体。
つまりどちらにせよ僕には夢も希望も選択肢もないらしい。
それならば想いを告げたあの時、ありがとうと微笑まないで欲しかった。
その所為で未だに僕は、貴女を諦めることが出来やしない。
「僕だって、泥にまみれる時もあります」
「そうだね」
「怪我をしたら苦痛で顔を歪めもします」
「まぁ人間だからそうだろうね」
躱し方は手慣れたものだ。
痛んだ胸に顔を歪めるが、それすら綺麗だと彼女は言う。貴女の方が綺麗で仕方ないのにと幾ら言っても笑顔で拒まれる。
堪えられない。
「そんなに、年下が嫌なんですか」
「うん、ごめんね。そんなに嫌なの」
遠慮はいりませんと始めに言ったのは僕だ。だから傷ついた顔をするのだって本来ならばタブーであるのに。
隠せない。(隠したく、ない。)
「それに、やっと仙蔵を振り向かせそうなの」
「そう、ですか」
「……意外と泣かないんだね」
「泣きませんよ」
だって貴女が幸せになれるのでしょう?
捨て身の攻撃すら彼女には効きはしなかった。相変わらず笑っていた。
悔しいですよ先輩。
こんなに貴女が好きなのに、狂おしいほど愛しているのに。
悔しいですよ。あんまりですよ。
「どうぞお幸せに」
「ありがとう綾部、大好きよ」
本当、あんまりだ。
(080628)