sleep.04

□モルモット
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過大評価が過ぎていた、とでも言えば良いのか。
何にせよ少年である。それは揺るぎない事実。

ただ、少し他よりも忍者としての素質があっただけで。
それから異常に美しいだけだ。


「嫌な気はしないな」

崇拝していた時期もあったことを告白してみた。特に考えや下心といったものはない。
尊敬だって彼と親しくなる前、つまり数年前のことであるし。今更隠すこともないと思っただけであって。

しかし返るのは遠慮とはほど遠いものであったので。あぁそうだコイツはそういう奴だった、と頭を抱えた私。
この猫かぶりめ、と毒づくのを忘れずに。

「で?何かな、その面白い顔は」

睨んでやったはずなのにまるで効かない。
挙げ句、ふふっと上品な笑いで返されてしまう。まったく彼は数段上手である。(認めたくはないけど。)


「それはそうと、利吉さんからお土産を頂いたんだ」

「…お土産?」

「兵庫の煎餅らしい」

食べないかい?と綺麗な顔で首を傾げられては断れないじゃないか。
よって不本意ながら頂くことにしよう。しつこいようだが不本意ながら、だ。

「美味しいか?」

「おいひいよ」

「そうか、それは良いことだ」

頬杖を付きながらこちらを見る彼。
そんな綺麗な顔で見つめられたら、た…食べにくいのですが。

一緒に食べないのか、と聞けば苦笑いを浮かべるとは。怪しい。
というかその時点で嫌な予感がですねぇ!


「ふむ、まだ食べられるようだな」

「……はい?」

「何でもない、こちらの話だ」

しかし私はその目が笑っていることを見逃さなかった。

結論。
また、やられた。





(080713)
賞味期限は半年前。


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