sleep.04

□禁欲って何?
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困ったもんだな、と頭を掻く。
助けを求めるにも毎日の委員会で疲れているのか相方である友達は眠り潰れているようだ。起きる気配がない。ピクリともせず。
運が良いのか悪いのか。
安堵を交えた寝顔、この状況。
溜め息が出た。深く。


「くのいちと言えど、夜中に男の部屋へ来るのは感心できないな」

「大丈夫、食満は何もしないもの」

優しいから。にっこりと微笑む彼女。
先手を取られてしまった。
綺麗な弧を描いている口元はいつにも増して紅い。
本気で俺を信じているのか。彼女は終始笑顔であるがそれもいつまで保つかは解らない。
俺だって男なのだ。
そういった年頃でもあることだし。先程から自身の身体に落ち着きがないことだって自覚している。

「痛い目を見る前に帰れ」

「やだ」

「女が男に力で勝てるはずなどないぞ」

「でも、やだ…」


これはもしかしたらそういう意味なのか。
誘われているのかもしれない。
思考は都合の良い方向へばかりに伸びてゆく。
もしもの話だが今俺が彼女を押し倒したとして、拒絶をされるだろうか。些か疑問。

じわり、手にうっすらと汗を感じた。


「何もしないで欲しいと言っておきながら何だけど…」

「何だ」

「抱いて欲しいの」

「な、…っ」

抱き締めるだけで良いのだけどと俯く彼女に。実に不謹慎だった、と一瞬だが想い描いてしまったそれを責めた。
しかし抱いたとしても後が抑えられるかどうか。自信はない。
かといって他の奴等へ回すことも躊躇われるので、また困惑の繰り返しだ。


「手を、出しそうになるかもしれないぞ」

「…うん」

「用が済んだらさっさと逃げろ」

「うん」

返事と共に胸に飛び込む。小さい身体。
ふわりと香るシャンプーの匂いが思っていたよりも生々しくリアルな感覚を引き起こす。

「まだ生きていると解って嬉しかった」

「ん?」

「大好き」

「…馬鹿が」

何故この状況でそれを。





(080723)
夢だとしても彼女を置いて逝く気はもとよりないのだが。


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