sleep.05

□照れる、な
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にこにこと仏顔は茶碗を差し出す。
いつもの調子で、といえばそうなのだが今日はどことなく受かれているような。
しかし常に仏顔。

お代わりですか。差し出されたそれを受けとれば何だか新婚のようですねぇ、と。頬がほんのりと紅みを帯びる。
照れるなよキモイ!
思わず茶碗を投げ付けたくなった。

思えば珍しく寝坊をした彼の所為で朝飯が初めて二人きりなのだ。
いつも遅れてやってくる猫のような黄色い頭も既に見送ったばかりであるし。日だってこんなにも高い。


「…ヘイハチは第一印象で人を騙すタイプだよね」

「そうでしょうか、私の方が騙されたと思いますが」

「は?私に?」

「はい。こんなにご飯を美味しく作れるとは思いもよりませんでしたから」

「…それはつまり不器用そうだったってこと?」

「………、いえ」

だったらそのしまったというような顔は何だ。
睨みを利かせながら茶碗から溢れるほどに米を盛ってやる。(よしよし、これは食べづらいだろう!ざまぁみろ!)

「大盛りですか、やはり貴女はお優しい」

「…何でよ」

にっこり、笑顔だ。しかしよく考えればその反応は意外でもなんでもない。口を開けば米なのだ。解っていた。

「いつか私の為に腕を奮って頂きたいものです」

「何のこと?今だってこうして毎日食事を…」

「私だけの為に、です」

「…」

一応、求婚をしているつもりなんですが…解りませんか?
そう本気で照れられるとこちらとしても何だかなぁ。キモイなどと言って突っ込んでみる余裕もない。
つまり彼は、ヘイハチは、私に。……つまり、


「ヘ、ヘイハチ」

「何でしょう」

「こ、米粒が…ほっぺたに…に、似合うねぇ!」

「…錯乱ですか」


(080808)
だってそれは不意打ちでしょう!?


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