sleep.05
□ストラックアウト
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「あついねぇ〜」
「夏だからな」
いや、私が言ってるのはあんたのことなんだけど。
かじりかけのアイスキャンディーを彼に突き付けるとウザイやめろと一掃された。
目を見開くことをしないとは、さすが。半ば感心気味に目を覗き込んでみるがただ暑さに据わっているだけだったので苦笑いを零す。
「目が逝っちゃってる」
「大丈夫か?」
だからそれもあんたのこと、!
言っても内容を理解できるのかも微妙なところだ。
冷えた麦茶の注がれたコップを頬に押し付けてやると唸り声を漏らすので。それは熱中症じゃないのかなぁ。
私を日影に入れた所為で彼は日向に追いやられている。何気なくそういう優しさを見せる彼には日々感謝が尽きないが損だとも思う。
なるほどこれでは体温も熱くなるわけだ。
「文次郎ごめんね、アイス食べる?」
「甘いのは…好きじゃない」
「じゃあせめて水を」
手渡したそれを一気に流し込むと生き返った、と大きく息を付く。が、相変わらず目は据わったままであるので生き返ったのかどうかはまだ怪しい。
「少し眠った方が良いと思うよ」
「そうだなぁ」
「今なら格安で膝枕実施中」
「…誰の所為だと思ってんだ」
「じゃあ無料で」
(080809)
頭を乗せるほんの一瞬、たじろいだ表情。