sleep.05

□この耳にそのフレーズを繰り返して
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学校指定の上履きが宙に舞った。と、脳が認知したと思えば腹部に衝撃。
やや強いので目を見開いてしまう。というか、み、鳩尾…!

「ってぇ!」

「あ、ごめん痛かったね」

痛みを訴えると反射的に寄せられていた頭が離れていくので、慌てて引き寄せ態勢を戻す。
ふふっと漏れた笑い声がこそばゆい。

「笑うなよ、痛かったんだからな」

「だからって涙目にならないでよ」

細い指で溜まったそれを掬われる。
ち、違ぇよ…!
恥ずかしくて否定を見せてみるが、じゃあ私が離れそうで寂しかったんだーなんて更にたちの悪い言葉をニヤリとした笑顔で返されたので、かなわない。


「三井は寂しがり屋さんだねぇ」

「…言ってろ」

頭をわしわしと撫でられて子供扱いにもほどがある。
しかしそこまで嫌だと感じないあたり自分だってこの雰囲気に呑まれているわけで。
ばかっぷる。まさか自分がなるとは思いもしなかったのだが。
悔しさを言い訳に笑みを浮かべる唇を塞ぐ。


「み、つい」

「ん?」

「…かーわいい」

「うっせぇ!」

それでも赤くなるような反応が見受けられないのは残念に思う。
むしろ赤いのは俺の方なので楽しむのだって彼女のみだ。

「あー!何だかなぁ」

「ふふっ」

弱音を吐くにも恐らく塞いだその口角が上がるだけでしかないのは目に見えているし。だからといって平静を装ったところでバレることも予想できる。
もう少し自分が大人になれば済むのだろうけれど、それにしたって彼女の方がやはり数段も大人びているのだ。


「はぁー…何で男ってこんなにガキなんだぁ?」

「何を今更言いますか」

「ていうか、いっつも俺ばっかりドキドキしてるのが気に喰わねぇ…っ」

だってほら、たまにはお前もドキドキさせてやりてぇじゃん!

照れ隠しの笑顔で頭を上げた先には望んでやまなかった、ゆで上がったような赤い赤い、


「み、つい…っ」

「へ?」


しかし無自覚。

(081108)
見開かれた目は合った瞬間に逸らされた。
か、可愛いじゃねーか…!


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