sleep.05

□灼熱ダイブ
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嫌いなものを挙げればきりがないことに気付く。例えば今のように茹だるような暑い夏がそうだ。それにこたつという魔物が心を捕らえて離さない冬も。
どちらにしたって待ちわびるほど好きじゃない。

「じゃあ、結局お前は何が好きなの」

「つまり好きなものが少ない所が私の欠点ってことだよね、そう思わない?」

「……お前、俺と会話する気あんのか」

「ないけど」

「そうかよ」

だったらお引き取り願おうか。
開かれたドアの向こうでは忙しなく走り回る中忍の皆さんの姿。あぁ夏休み真っ最中なのに大変お忙しいことで。

「…ねぇ、何で同じ中忍なのにシカマルはこんなに暇してるの」

「ばか。俺は暇してんじゃなくて邪魔されてんの」

「わー大変じゃん」

「そーだ、すっげぇ大変なんだ。だから出ていけ頼むから」

「それは無理でーす」

「じゃあせめて手伝え」

「お昼寝でもしよっかなー、ここで」

くるりと背を向ける。ほら見てベッドだって私を待ってるよ!
好きにしろと諦めの言葉を呟かれればこっちのもの。
それでは遠慮なくおやすみなさーい、お仕事頑張ってー。頭を押さえる彼を背にごそごそと仮眠用に設置されているベッドに潜り込む。
毛布をばさりと動かす度に漂うのは紛れもなく彼の匂いだ。
煙草なんか吸い始めちゃったりして本当どうしようもない不良忍者。そんなんじゃ天寿を全うなんて出来ないから。

「あーヤバイ、シカマルの匂いがして……ムラムラする」

「盛るな変態」

「大丈夫だって一夜の過ちくらい、誰も君を責めたりしませんっ!」

「ふざけろテメェ」

どこまですれば彼の怒りに触れられるだろうと思っていたが書類の山を崩して飛び掛かってきたあたり意外に沸点は低いらしい。
逃げも隠れもできないままあっさりと倒された身体はスプリングを大きく軋ませてベッドへ不時着した。変な体勢だ。背中が痛い。

「どうせ出来ねぇとか、思ってるだろ」

「うん、どうせ出来ないとか思ってるよ」

「……こんなことされて怖くねぇのか」

「じゃあシカマルは怖いんですか」


後で泣いてもしらねぇからな!
挑発したそれが引金となったようで、ずっしりと体重を預けられては危うく窒息死という言葉が頭に浮かぶ。
頬に添えられた両手。見据える目は怒りを隠しきれずに揺れている。
ゆらり、ゆらり。


「あ、でもやっぱり優しくしてね」

「するかボケ」

しかし愛に満ちていた口付けはゆっくりと。


(081104)
優しさは終始貫かれたまま。


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