sleep.05
□直感ストイック
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ここじゃあクーラーもないし夏は苦しいねー。
困ったような笑顔を貼り付けたまま持っていた必需品の団扇でそよそよとこちらを扇いでくるので、つい肯定を返してしまう。
しかし生憎ここは彼女の部屋ではない。扇ぐことも機嫌が良い場合のみだ。
「買おうよクーラー」
「ならばお前の部屋に行けば良い」
「えーだめだめ」
「すぐ隣だろう」
「だってほら、姉ちゃんが男連れて来てるから」
「…」
「二人っきりでナニしてんのかねぇ」
覗いてみよっかー?
おもむろに窓を開け放つ彼女。良くない、これは本気だ。
二人きりなのは何もむこうばかりではないだろうと手を引きながら言ってみたが効果はない。
「これでキュウゾウに彼女が出来たりしたら本当に居場所がなくなっちゃうなーって」
「…」
「最近思う」
あり得ない。悩みの中に自分が関係していることもそうだが、目の前にいる彼女以外にそんな女など。俺には、
「必要ない」
「うへー!ストイック!」
カッコイイと言われて少し気が揺らぐ自分はだいぶ洗脳されてしまっているようだ。
彼女はどうかしらない。しかし俺は、少なくとも彼女よりはそういう気はあるのだと思う。らしくないことだ。言えば確実に笑いの嵐が吹き荒れること受け合い。
「でもあんまりストイックすぎても婚期を逃すだけだから損だよ」
「…」
ならばお前はどうなんだ。呟けば大体の目星は付けてあるから心配などない、と弾けるような楽観的な笑い。
「物好きな奴もいる…」
「あらら自虐的なのは良くないよー」
「……、な」
全てバレていた。
(081106)