「先生、好きです」
「そっかぁ」
「本当に、好きなんです、先生のこと」
「うん、ありがとうな、先生嬉しいよ」
生まれて初めて人に愛という目に見えないものを吐いたのは放課後の教室だった。
てっきり愛とは幸せを指すものだとばかり思っていた私。こんなに苦しいものだなんて聞いていない。
何せ生まれて初めて愛を告げた相手は死んでも受け入れる気を持とうとはしてくれていないようなのだ。
恋をしてみて初めて知ったことなのだが、女の勘というものは本当に存在し、本当に当たるものであるみたいだ。
実証は今、
この状況にあり。
ありがとう。
大人である先生は私の精一杯の愛を流すように、その一言で終わらせてしまう。
全てを。
軽く、さらりと。
「好きです」
「うん」
「大好き…」
「解っているよ」
溢れた涙を掬う指先にすら嫉妬してしまうなんて、嗚呼私は相当おかしくなってしまっているようだ。
掬うならば私ごと、心ごと。
しかしそんなのは夢物語だ、大概にしろ。
さもなくば、
「愛してます」
「それは、少し…なぁ」
はにかむ笑顔。
薬指にきらりと光るは髪に似た銀色。
(銀八)
見たことか、傷付くのは自分だ。