sleep.06

□輝いたコックドール
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凄みがある。彼の眼を見ているとそんな、射られるような感覚に陥るのだ。
頭の先まで突き抜けるような衝動とは、まさに。あぁこういう事をいうものなのか。

「で、その衝撃を恋の始まりと勘違いしたのか…」

「えへっ」

「いや、笑えねーよ」

こっちは何年前からだと思って…、濁した言葉に照れが見えたので思わず抱き付いてみせる。
不器用な彼はこんなにも愛しい。



「私さー」

「あ?」

「三橋くんになりたかったなぁ」

そしたら放課後も一緒に帰れるし、試合中もずっと側にいられるし。
だけどそんなの嫉妬だと思う。浅はかで醜い。汚い考え。
相手が男にも関わらず、どす黒い感情を感じずにはいられないのはそこまで私が彼に堕ちているからだ。
しかし弾みで口から抜けてしまった言葉に彼は驚愕しか感じなかったようで。吐かれた言葉に彼は固まった。

「俺…お前が三橋だったらヤだな…」

「ノーコンだから?」

「じゃなくて、優しくしてやれないから」

絶対に、と言い切る彼はとても苦い表情で笑う。
というかそれでも目だけが笑えていないのは日頃の苛立ちの所為なのか。


「でも私は、三橋くんが羨ましいの」

「まだ言うか」

「阿部と一緒なら練習だって辛くても頑張れるし」

「へぇ…」

「あ、でも三橋くんになるんだから田島くんと仲良くしなきゃね」

「そうなったら蹴っちゃうかもよ、俺」

「あはは、それでも。阿部なら良いよ」


例え大事にして貰えなくても、側にいさせてくれるなら。
笑って言い放てば突っ伏してしまった彼。
覗く耳は赤い。





輝いたコックドール


(081219)
俺の台詞、取るんじゃねぇよ!

リクエスト下さった方へ。
遅くなりました、すみません!阿部が頑固すぎて難産でした(笑)


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