sleep.06

□眠り姫にキス
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茹で終わった蕎麦はいつの間にか伸びきってしまったようだ。
食べるには些か物足りなさが残る味である。しかしながら捨てるには余りにも惜しくもあるので、どうしたものか。困ってしまう。

それ以上にせっかくの寝顔を覚ましてしまうのは、何よりも。
視線の先でハロを抱き締めたまま動かない身体に溜め息が漏れる。
これは心惜しい。

隣には眠り姫
(眠らないで、君と過ごす時間が惜しい。)














小さくたてる寝息にそっと耳を傾けてみる。
こんなにも小さな身体でも呼吸は絶え間ないのだなぁと、妙な感心が浮かぶ。

寝息の間に小さく飛び出したくしゃみ。驚いて揺れるハロ。
風邪を引かすわけにはいかないので毛布を掛けてやる。生まれ持った兄貴気質の所為なのか自分でも驚くほどに優しい手付きだったのが妙に照れくさくて堪らない。

うぅん、唸ったと思えば寝返りを打つ。身体。投げ出された手は自分のそれよりも一回りも小さい。

起こしてしまわないように出来る限り細心の注意を払って腕の中に閉じ込めてやる。
回した手の先を少しでも動かすとくすぐったいのか身を捩る。
ふふふっ。笑ったようにみえてしまった。
思わずつられ笑い。

愛しい寝顔にキスの雨を降らせてみようか
(王子だなんて慢心だらけの自惚れだけども。)















「何で起こしてくれなかったの」

「いや、それは…なぁ」

「お蕎麦こんなに伸びちゃったし、」

「うん」

「気が付いたら年は明けちゃってるし…」

「まぁ、そうだな」

「そうだな、じゃなくて!」

よくも飄々と言って退けてくれたものだ!とばかりに突っ掛かる彼女は寝癖を付けたままなので威厳どころか可愛らしさが隠れきれていない。
それに先程までは目だって眠そうなそれだったのだ。思い出すと微笑ましい。

笑いながら、跳ねるそれを撫で付けてやれば見たことか。
やはり愛しさばかりが募るのだ。

眠り姫は低血圧
(おい、赤くなってるぞ。)













それは、いつまでも変わらないと信じていた光景たち。





(090101)
おめでとう2009年!


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