sleep.07

□ノーネームを何と呼ぶ
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上手くいくことはそれなりに多いけど、上手くいかないことだって同じくらいに多いのだ。と、嫌になってしまいそうな程はっきりと気付かされた。
晴れ渡ったアフタヌーン。つまり午後。


「ゾロ兄さん聞いて聞いてー」

「……いや、兄さんって何だよ」

甲板でトレーニングに勤しむ緑の短髪はいつも通りの光景だし。
それに向かって毎日似たような愚痴を零す私だって世界から見ればいつも通りの光景だ。

「何だよ」

「あのね、今日もルフィは相変わらずに鈍感だったの」

「へぇー」


……、それで?

「へ?」

「それで、俺に何の用だってんだよ」

割と軽く流されて抱えていた問題は行き場を無くしてしまった。
私としては重大な悩みのはずだったのに。何でこんな扱いを。
だから私、何だか仲良くなれる自信がしないなぁーなんて……、ねぇ。
ぐだくだと言い訳みたいに吐き出す愚痴は我ながら馬鹿みたいだと思う。格好悪い。

仲間に入れて貰ってから時間だけは一方的に過ぎていくけれど。その間にみんなと打ち解けられたか、と聞かれれば直ぐに肯定は出来そうにない。
そんな状態。
人見知りなんてするような性格じゃあない。
それに感じているのは疎外感とは違う。
けれど、何だかんだ言ってまともに話が出来るのは女同士の彼女達二人と。それから今此処で私を重しに腕立て伏せを始めようと試みている彼くらいのものなのだ。
航海士の彼女に言わせればそっちの方が難題だ!って言うけれど。
でも、ゾロは見た目は怖いだけで本当はすごく優しいじゃあないか。
だから話しやすい。頼ってしまう。安心する。
しかしそれがいけない。
余計に焦るのだ、このままだと他の仲間との交流が更に疎かになってしまう気がして。

「…」

「いやいやちょっとそこで黙らないでよ不安になるから」

「…お前さ、」

「はい?」

「好き、なのか」

珍しく顔をこちらに向けずに話し始めるので、何か言いにくい話なのだろうかと不安が過る。
ていうか好きって?
唐突過ぎて話がどの方向に飛んでしまったのかすら解らない。

「……まぁ、プリンは好きだけど」

「誰がいつテメェの食の趣向を聞いたんだ」

「ちなみに嫌いなものはホワイトアスパラガスね」

「マイナーだなぁ……つーか聞いてねぇし」

お前にはほとほと呆れましたよと言いたそうな顔をして、あいつのことに決まっているだろうと彼が挙げた名前は船長のもの。
取り敢えずプリンと同じくらいには好きだよ、と答えたら何故だろう。更に呆れた顔をされてしまった。

「そういうんじゃあなくてな」

「ん?」

「つまり……」

煮え切らない表情でこちらに向けられた真剣な眼差し。
でも意図が読めないから向けられようとも私にはまるで意味を成さない。
懸命になってこちらも返す眼差しを真剣なそれに変えてみると、何故だか今度は向かい合う顔がみるみると赤くなってゆくではないか。
仕舞いには片手で視線を遮断されてしまった。
本当に意味が解らない。

仕方がないので首を傾げて眉間に皺を寄せて、アイドントノウの意を示す。
呆れを通り越して怒りに達し始めた彼の口元がひくりと小さな痙攣を見せた。
まだ解らねぇのかと低い声はテノールなんか優しげのあるものじゃあなくて、ただドスが効いているだけだ。怖い怖い。

「……鈍感」

「それだけはゾロに言われたくない」



この関係に名前はない

(090926)
けれど、さりげなく俺のことも好きかと聞けばプリンよりも断然好き!と笑って言うものだから。まぁ許してやらなくもない(とか、思ってしまう自分が歯痒くて許せねぇ!)


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