これは夢ではないかと頬を抓る。
痛みはある。
流れた涙は抓った頬が痛かったからだという事にしておくが、どうやら彼には気付かれてしまっているようだ。
大きな手が頭を撫でた。懐かしい。
それにしてもこれはあぁ夢なんかじゃない!と叫びたい衝動に駆られるが、この感激はそれすらも通り越していくらしい。今ならば発狂だって出来る。
「ずっと待ってたんだよ」
「あぁ、悪かったと思ってる」
相変わらずの強い目がフィールドを見渡す。
帰って来たという実感はあるかと聞けば懐かしいなと呟いた。言うなれば感無量である。声色がそうであったように。
それなのに悪魔のような彼は憎まれ口を叩くばかりなので、素直にはなれないのかと溜め息が出た。(彼が誰よりも嬉しく感じている事は承知であるが。)
「変わらねぇな」
「だって蛭魔だし」
「いや、それもそうだが…お前がな」
それが堪らなく愛おしいのだと彼は言う。仲間もフィールドも、この雰囲気すら。
「おかえり」
大事な事を言い忘れていたと彼の耳に唇を寄せる。ただいまと彼はそれに返事を返した。
ただそれだけが愛しい。
(071215)