「どういう事だと思う?」
声は殺伐としていた。足元に散らばる譜面はきっと自分の知らない曲だと知っている。
ふと部屋の奥に視線をやると壊れたギターと赤い頭が見えた。
「何だよこりゃ…」
床の譜面を踏むわけにもいかないので律儀にも全て拾い上げながら、ついでに全壊したギターを撤去する。
此処は部室だ。ハードロックを真似るのなら家でやれ。
しかし心の叫びは勿論届く事はなく、撤去されていくギターを追うわけでもなく。ただ精悍な顔つきのまま床を睨んでいるだけだ。
何がしたい赤羽。
「いつから?」
「コータロー達が来る前から」
「ったく、」
溜め息も出ない状況に頭を掻く。今までこんな所に彼女一人で居させてしまったのか。これはスマートじゃないな。
「赤羽!」
肩を掴んで強めに身体を揺らす。彼女にも名前を呼ばせてみるが、どういうわけが知らぬ聞こえぬを通すまま。
「スランプってやつかね?」
「知るか、放っとけ」
「冷たいなぁコータローはー」
隣で頬が膨れた。
心配するな、どうせ明日には元に戻る。
(071218)
どうせ眠いだけだ。