sleep.02

□星に願いを
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にこりと笑った顔はどうやら無意識のうちに感染してしまったようだ。気が付けば緩んでいた口元を、慌ててマフラーで隠し誤魔化すように笑ってやるが。しかしこれでは意味がない。

「セナ、笑ってる」

「何でか解らないけど…そうだね」

幸せそう。そう独り言のように呟いて添えられた手に心臓が跳ねた。掌の温度は熱い。指先は冷たい。
驚いて彼女を見やるが、俯いていた為に表情が読み取れなかった。また、にやけてしまいそうだ。

「ねぇ」

呼び掛けに振り向いたものの少し顔が近い気がして数歩ばかり後ずさる。頬に感じた違和感に思わず手を当てる。これは何だろう。一点だけがただ熱い。

「頑張ってね」

「う、うん」

赤いのはきっと夕日の所為だと決め込んで冷たい指先を静かに包み込んだ。見上げた空では一番星が瞬きを見せている。
このまま暖めてあげれれば良いのに。



(071221)
クリスマスボウルの数日前な設定。


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