我ながら嫌な夢を見たなと思った、午前2時。
掠れて震える小さな声は確かに自分の名を呼んでいたし。たまに聞こえる嗚咽は何より苦しそうで胸が痛んだ。
「…もしもし?」
とっさに掴んだケータイからは不機嫌な反応が返る。突然起こしたのだから無理もない。だがあの掠れた弱々しい声よりは幾分ましであったのでほっとしたのが本音である。
「武蔵…、今2時だよ」
「あぁ解ってる」
「どうしたの、何かあった?」
「…悪い」
一体何があったのかと眠そうながらも懸命に自分を相手にしてくれようとする態度に、柄にもなくときめいた。同時に罪悪感も姿を見せる。裏腹に熱い胸が苦しい。
「…大丈夫か」
「ん?何が」
「いや…何でもないなら良い」
気にするなとやや一方的に電話を切って軽く自己嫌悪に陥る、情けない。本当に情けない。
だけど安心したのも事実。
「はぁー…」
安堵の余り深い溜め息が喉を出ていく。目を覆った手は暫く離せそうにはない。
(080106)