sleep.02

□ローズマリーは此処に
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寒い空気に吐いた白。わざとらしく深く吐けば更に色濃く広がっていく。
胸がじんわりと温かく、同時に締め付けられるようである。
それでいて薄暗い空に揺らめいて消えるのだ。

視界のやや斜め前で早足に歩く彼や、無理矢理に繋がれたように見える右手。
首に巻かれた彼の黒いマフラーまでもが全て、視界に入り込んでは素敵という言葉で収めてしまうには安っぽさが過ぎている。
しかし何とも言えないこの溢れる感情の価値を下げる気にはなれないのだ。
当然ながらこれはただの美化。

「すっごく素敵」

「ただの二酸化炭素が素敵なのか」

「……そうじゃなくてさ、」

雰囲気を読めと振り返って睨む。
ここでまだ睨み返された訳でもないのに怯みかけてしまったのは、相手が常に鋭くつり目だからであるのだが。
その風貌は悪魔とも言うべきか。(言わなくとも誰もがそう思っているはずだ。)

「二酸化炭素とか、全然ロマンチックじゃない」

「ケケケ」

もはや笑い方のそれすらも悪魔のようである。
しかしふと見たその瞳が優しかったのでそれ以上の言葉は出なかった。
相変わらずつり目であるのでいつもよりは、の基準ではあるが。

弧を描いた口元にも一瞬だけ年相応な表情が。
何も演じなくとも彼の魅力はこんなにも私を惹き付けて止まないのに。
しかし残念な事に彼にはその自覚がないのだからこれはまた。

「俺は、テメェの吐いた二酸化炭素を吸って生きてやっても良いと思うけどな」

「、え」

「これでもロマンチックじゃねぇって言い張るか?」

「ま、まさか!」

満足気にニヤリと笑う。
とても先程の少年のような笑みとは呼べないが。いつもの笑顔にほっとしたのもまた事実に限りなく近い。





(080109)
何事もないような素振りで手を繋ぎ直された。
赤い耳が隠せていたならば格好良さも保てたであろうに。

兎涙さまへ。


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