sleep.02

□純粋な策士
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若者とは未熟が常である。後を考えているようで何も悟れてなどいない。
淡々と話し続ける彼の表情に変化は見当たらなかった。
口調は悟りとは違って寧ろ諦めに近い。
愛情を知らなければこうなのか。いやしかしそれについて理論的な説明をさせてしまえば完璧を返して来るのだろうし、理解してしまえば彼でなくなってしまうような気もする。





「ですがそうやって遠回りするのだって無駄じゃないと思いたいです、私は」

取り敢えず今の所は、の話ですけど。
向けられた笑顔すら余りに薄く儚いものだ。立ち上がる彼を見て思う。

「それはどういう、」

水滴を跳ねて角砂糖が一つティーカップに落とされる。
かと言ってすぐさま口を付ける訳ではない。
遊んでいるだけかと言うならばそうだ。可愛げもある。





「帰るなら送ります」

何事もないように話が逸れた。恐らく無意識の行為にはただただ苦笑うしか。
気になるが深追いは私の趣味ではない。よって無駄な詮索もない。

「珍しいね」

「最近は何かと物騒ですし」

「ふーん」

「それに心配ですから」

さらりと言い放つ言葉にぐんと体温が上がってしまった。
ポケットに数個ばかり飴を押し込む姿から発せられたとは到底想像も付かないのだが。それもまた彼らしさなのだ。





外はひんやりと冷たい風がしきりに吹いているのでマフラーがはためいた。
鯉のぼりの吹き流しを連想しますと言った小さな呟きがやけに子供らしくて胸の奥がきゅんと締まる。

「外は寒いので手を繋ぎましょう」

「何て言うか純粋すぎるのも怖いよねー」

「私はそんなに綺麗じゃないですよ」

「しかも謙虚と来たもんだから厄介だわー」

「そうですか」

触れた手に目を見開く。
握り締めたのは意外にも彼の方から。握り返さなければ離れていきそうであるが言葉にすれば緩くも強くもない。
どうやら熱にも気付いたようだが、何も言わないその優しさに今は甘んずる事にしよう。





(080209)
映画公開記念!


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