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□COME CLOSER
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「男前を前にして無反応かなーこの新人兎ちゃんは」
「羽沙希です」
「んー良い匂いすんな、お前。こう…石鹸の匂いっての?」
「止めて下さい」
僕を壁まで追いやって、御子柴隊長は至極楽しそうに笑いながら僕の首筋に顔を埋める。
耳の下ら辺を鼻で擽られ、小さく身を捩ると耳元で可愛い、と低く呟かれる。
ざわざわ。
こう言う時に限って、式部副隊長は帰りが遅い。いつも、遅い。飲み物を買いに行くと10分は帰って来ない。
その10分が、僕には生き地獄なんだ。
『羽沙希』
名前を呼ばれ、
青に触れる。
赤い、手。
真っ赤な手で、
心の臓を潰す。
『羽沙希』
苦しい。
『好きだ 』
拒絶を、拒絶する貴方。
「なあ、キスして良い?」
潰さないで、下さい。
「嫌、だ…ッ」
「暴れると、舌、切れちまうぞ」
「お、男です!」
「見りゃ分かる」
自分でも珍しいと思う程、震えた声。しかしだから何だ?と笑いながら受け流される。
その笑顔が、僕を、潰すんだ。
知ってますか?
青が。
赤が。