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□COMFORT
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こうなった笑太はもう止めれないのは重々承知。ならばどうすべきか。
分かってはいるが、せめてもの抵抗。
「しょ、笑太…さん…」
「!…何だ?」
名前を呼んだ途端、機嫌の良さそうな声で返事をしながら、羽沙希に目線を合わせた。体はまだぴったりくっついたままだ。破顔一笑である。
やはりダメか、と観念して今日の予定を思い出す。仕事も、特になくてただ今日は剣術の練習をしようと思っていた。言うならば、暇、なのだ。
仕方無い、恥ずかしい、けど。
「あの…………どうしても、離してもらえないんですか?」
「………知ってるくせに」
どうやったら離して貰えるか、なんて。そして笑太は羽沙希の鼻先に小さくキスをした。
ああ、恥ずかしい人だ。
意を決したように、羽沙希は真っ赤になって俯きながら、唇を動かした。
「誰もいない、所じゃないと…嫌です」
「くくっ…可愛い奴」
そう笑うと、やっと羽沙希を下ろして今度は手を握り締めて歩き出した。
これから起こる事を思うと、羽沙希は久方振りに涙が出そうだった。