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□COMFORT
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連れて来られた場所は、普段は誰も入ってこない資料室。刑を執行された死刑囚の情報等が収まってる本棚を見て羽沙希は不思議な気分になった。



「久し振りだな、スるのは」



恥ずかしげもなく言い放つのは紛れもなく、自分の恋人。いつもそうだ。セクハラで訴えたら勝てそうだ。だが多分負けるだろう。



(恋仲でも、ちょっとは謹んで欲しい…)



恥ずかしい、の一言に尽きる。
未だに『したい』と言われただけで顔を赤らめてしまう自分に対して笑太はいつもストレートに思いをぶつけ、直ぐに行為に及ぼうとする。



………それがたまに不安になる。



誰でも良いのではないだろうか。
そう不安に駆られる。今でも、この瞬間でも。


するとにやにやと笑っていた笑太が、いきなり真面目な顔をした。
驚いて小さく目を剥くと笑太は羽沙希の薄く、柔らかい唇に自分のを重ねた。



「またしてんな、その泣きそうな顔」

「え…」

「お前にしか、言わねえしやらねえよ。甘えたりとか、こんな事」



そう言って羽沙希の頬に触れる手は冷たくて。




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