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□KEEP
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黙々と机に書類を広げてすっと静かに目を通す様は、落ち着いた、可愛げのない少年。



……取り乱したり、しないんだろうか。



ふと、そんな思いが過ぎったと同時に、新人くんがこちらを見た。



「開けて貰って有り難う御座います」

「え、今このタイミング?」



やっぱり変。





面白い!



取り敢えずどう致しまして、とまたにっこりと笑うと、またじーっとこちらを見つめる新人くん。さっきも応答しないまま僕を見てたけど何なんだろう…
だけど僕は差して気にした様子も見せず、適当にファイルを取って広い資料室の中、新人くんの隣にわざわざ腰掛けた。



「上條、隊長…?」

「名前、覚えてたんだ?」

「あ、はい」

「でも僕、君の名前をまだ覚えてないんだよね…もう一回教えてもらえる?」



ずいっと顔を近付ける。意外と睫毛が長い、とか目が大きい、とか。色々な発見がある。あ、顔は小さい。
すると流石の鉄仮面も驚いたのか、大きな目を少しだけ大きくして後方に体を引いて、戸惑いながらも名乗った。



「藤堂羽沙希、です」

「うさき…」



名前は可愛い。そんな失礼な事を思いながら、ふぅん、と頷いた。兎みたい。寂しいと死んじゃうのかな?

呟いて暫くまた兎を見つめてみた。すっと通った鼻筋に、薄い唇とか。男相手に見る所が些かおかしいと自分でも思う。でも視線を外せない。
て言うか、こんだけ見られてて、何で無反応なの。あまつテキパキと書類を片付けていく。うわぁ、兎版元親だ!嫌だ!

適当にパラパラとファイリングされた紙切れを捲りながら、考えるのは隣の新人くんの事ばかり。しかも今この資料室には僕と兎だけだから、余計他の事なんて考えれない。


そう言えば瑞城が言ってた。



『第一の新人は鉄仮面で、冷静で養成所の教員達も口を揃えて彼の事を素直だ、と言う』



心がないから、余計な感情がないから冷静で視野が広い。だから教員が出した命令もそつなくこなせて、優秀。

従順。僕の好みにぴたりとハマるね。ぞくぞくしちゃうや。



「ねぇ、藤堂」

「はい」



呼び掛けると、書類から目を離してこちらに向き直る。真っ直ぐに見てくる目に、小さな悪戯心が芽生えた。



「僕の名前、知ってる?」

「上條、璃宮隊長…」

「お利口さん。ねぇ、名前で呼んでみて?」



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