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□KEEP
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あ、固まった。瞬きも忘れたかのようにじっと僕を見てる。そのまま、ずっと僕しか見えなくなれば良いのに。
「ほら、早く」
「……璃宮隊長」
「違う」
璃宮隊長、て言うのも意外と好きだけど。でもそれだけじゃあ、満足できないなぁ。
兎の右手を手に取り、それをそのまま僕の左頬へと導く。ぴたり、と頬を寄せてもう一度兎を見る。
今度は心底驚いてるのかな、目を一杯見開いてる。可愛い。
「璃宮って、呼んでみてよ」
「…、年上、ですし…上司を呼び捨てに出来ません」
「………頑固者」
「頑固者で結構です」
あ、冷静になってきた。状況を読み取るのも迅速。本っ当、優秀。
でも面白くない。
もっと、もっともっと。
虐めたい。
「じゃあ上司命令」
「は…」
「璃宮と呼べ。今すぐ」
握っていた手を口元にやって、人差し指の先をカリッと噛んだ。すると面白い程にビクッと肩を震わせる兎。あの総隊長ですら、きっとこんな可愛い反応を返した所、見た事ないんじゃないかな?そう思うと優越感に浸れる。
ちらり、と様子を伺うと、眉間に皺を寄せて顔を少し赤らめてる。
ああ、どうしよう、この生き物。
「り、くっ………?」
本当に、可愛いなぁ。
「ふふっ可愛いね。お利口さんは、好きだよ」
ご褒美に、噛んだ指先に口付けると兎は力を込めて腕を振り解いた。む、可愛くない…
「今褒めたばかりなのに」
「…っ、お先に、失礼します」
「しかも無視?可愛くないなぁ」
でも、面白い。
可愛くないのに面白い。そこが可愛いから、面白い。
書類を順番もパラパラな状態で寄せ集めて、それをひっ掴むと、兎は早足でドアまで逃げた。
「藤堂」
そう優しく呼び掛けると、兎は驚いたようにこっちを振り返った。だって只で逃げるなんて、ずるいじゃない。
「また、遊ぼうね」
今度は、今回みたいに逃がさないけどね。
次は寂しくないように、捕まえたげるね。
その大きく見開かれた目も、名前を呼ぶ声も、唇も、心も体も、何もかも。
「僕のものに」
したげるからね。
そして兎は頭を下げて出て行った。僕はただ、笑うだけ。
END
おまけ。
「隊長、どこに行ってたの」
「もう瑞城は煩いなぁ。兎と遊んでたの」
「「………………………」」
「ん?何?元親まで真面目な顔して…」
「藤堂に、何したんだ?」
「いやいや、刀仕舞いなよ」
「じゃあ答えなよ、隊長」
「瑞城、銃をこめかみにごりごりするの止めてくれる?」
END