夢2

□彼岸花
1ページ/1ページ



 
 
そこに咲いてたのは一輪の彼岸花だった。一輪のそれは風が吹く度にゆらゆらと揺れていて、つい自分の身体を風を防ぐために使う。
 
 
 
 
 
「私、忘れてなんかないよ」
 
 
 
 
 
誰も聞いていないのは分かっているが声に出して言ったのは自分に言い聞かせる為かもしれない。
 
 
 
 
 
彼岸花の赤い色は目を奪われる程綺麗だった。今もあの時も。
 
 
 
 
 
「忘れられないよ」
 
 
 
 
 
貴方が言った言葉も温もり笑顔も全て。
 
 
 
 
 
嗚咽混じりに言葉を発すれば息が上手く出来なくなり苦しくなる。
 
 
 
 
 
「忘れ、なんか……しない」
 
 
 
 
 
最後に忘れないで何て言わないでよ。
 
 
 
 
 
そんな事言われなくても忘れられないんだから。
―――――――――――
何て馬鹿な一生の願い事なの。
 
 
 
 
 


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]