夢4
□桜は人を惑わせる
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「今日皆でお花見しない?」
全ては、この沙耶の発言から始まった。ちらほらと舞い散る桜の花弁はどこか儚げで見るものを魅力する。
「なぁ、沙耶ー。一緒に木に上らねぇ?」
「うーん……、ちょっと無理かなぁ……」
「そーだよなぁ。沙耶ちゃんはやっぱり俺と大人な時を過ごすんだよな」
「うーん、それも無理かな」
アホ猿とクソ河童の誘いをやんわりと断るがどちらも一歩も引かない。
そんな沙耶の肩を抱いて引き寄せる天蓬。慌てて俺を見て離れようとするが、天蓬は見せつけるように沙耶に密着する。
「――――っ……!」
気付いた時には沙耶の腕を掴み、天蓬から引き離しその場を走り去っていた。後ろから聞こえる声も沙耶の俺を呼ぶ声も聞こえずにただ走っていた。
「こ、んぜ……!」
不意に聞こえた声に我を戻し、沙耶を見れば苦しそうに肩で息をしていた。