夢4

□気付いて、気付け。
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厠に行った芭蕉さんを待っていたわたし達の前に、仔犬が現れたのは5分くらい前。

…曽良くんがこっちをやたら睨んでくるのも…5分くらい前から。


「………」


「(こわいこわいこわい!)そ、曽良くん…」


「何ですか」


「な、何でさっきからこっち睨んでるの…?」


「さぁ、気のせいでしょう。自意識過剰なんじゃないですか」


「う…」


なんなの一体…!わたしを睨む理由に全然心当たりがないけど……あ、もしかして!


「はい!」


「…なんですか、これ」


「この子!触りたかったんでしょ?」


曽良くんに差し出したわたしの手の中にはさっきの仔犬。きっとこの子が触りたくて、独り占めしてるわたしを睨んでたんだ!


「……はぁ…」


「え!何で溜息!?」


「沙耶さん…馬鹿ですかあなた」


「な、何でわたしがばか…『ぎゃん!』あ!!」


曽良くんはわたしの手の中めがけて断罪チョップを繰り出した、と同時に中にいた仔犬が飛び出していった

……今、仔犬の体が陥没してたような気がするのは…うん、気のせい気のせい

それよりも!


「曽良くん!駄目だよ、動物にあんな事したら!」


「………」


「(ひ!)に、睨んだって怖くなんか…わっ!」


「…まったく…まだ気がつかないんですか」


「……へ」


地面に背中をつけるように倒される
ちょ、ま、なにこの体勢…!!


「そそそ曽良くんん!!?」


「沙耶さん。顔、真っ赤ですよ」


にやり、と滅多に見せない笑顔の曽良くん
くそう、格好いい…!!


「あなたがあんまり鈍いから」


そう言いながらわたしの耳元に顔を寄せ、「…僕といる時は、僕だけを見ていればいいんですよ」





(そ、らくん…)
(はい)
(ひょっとしてヤキモ)
(………(ぺろ))
(ひゃ…っ!み、耳舐めないで!)
(あーっ!!そ、曽良君、沙耶ちゃんに何してるんだ!)
(芭蕉さんいい所に!助けてー!)

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